Dendrodium 「他に方法がなければやる それで失敗すれば神の思し召し」

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「他に方法がなければやる それで失敗すれば神の思し召し」 

ペシャワール会報が届きました。
ISがジャジャラバード南部に集まろうとしているというような情報(こちら)を見たりして、ペシャワール会は大丈夫だろうかと、ちょっと心配していたのですが、
ペシャワール会の灌漑事業が行われている地域は、相変わらず大洪水に苦しめられてはおられますが、
現地の人一丸となって、どんな試練にも弛むことなく、生きるための戦いを続けておられるようです。
以下 中村哲さんの味わい深い現地報告をうつしてみました。ご覧頂けたらと存じます。

予期せぬ洪水に、迷いなく全力投入
――技術を絶対視せず、忍耐を重ねて自然と共存


堰が機能停止

皆さんお元気でしょうか。
現在マルワリード用水路のさらに下流にある「ミラーン堰」(灌漑面積1100ヘクタール約4万人)の建設に忙殺されています。着工から1年、今春までに、取水口近傍の村落を保護する堤防をかろうじて築き。臨時の取水堰を作りましたが、予期せぬ洪水で地形が変わり、大幅に設計を変えています。
今年2月の「真冬の大洪水」の突発。7月の熱波に続く集中豪雨で堰が機能を停止、予想を超える大きな工事になっています。他方で干ばつはなお進行中、飢餓人口が増え続け、国民の4分の1の460万人以上が飢餓線上にあると言われています。PMSでは、「戦いより食糧自給」を掲げ、灌漑設備の充実による飢餓対策を各方面に訴え続けていることは、これまで報告してきた通りです。

大洪水と地形変化

しかし、大河を相手の仕事は、計画通りに進まない事のほう多く、自然は制御できない事を思い知りました。
クナール河沿いの作業地は、急流の大河です。問題になってきた新局面は、洪水流に伴う砂州移動や河道の変化でした。
技術的には、昨年度に竣工したマルワリード=カシコート連続堰の完成度が高く、「現状では適正技術」と宣言し、「PMS方式(斜め堰)の拡大による農村救済」を提唱した矢先でした。そこに今回の災害です。一筋縄ではいかぬことが分かり、出鼻をくじかれた思いでした。これでは「緑の大地計画」が掲げるモデル地域が、モデルでなくなってしまいます。
八月の第2波の大洪水で3km上流に分流が発生すると,作業地では7月の第1波で溢水寸前まで迫った河の水位が一転、今度は異常に低くなり、一時は流域の渇水さえ危惧されたのです。
一年前の着工時は、侵食される村落を目前にしつつ、堤防3km護岸工事で精力を使い果たし、堰造成を楽観視していました。そこに来た大洪水と地形変化はさすがに絶望的で、まるで底なし沼に引き込まれたようでした。ミラーン堰をめぐる一連の建設過程で、世界観が変わってしまったようにさえ思われました。
だが川の流れは、そんな人間の感情など頓着しません。次々と新たな対応を迫ってきます。既設の取水口や護岸線も、あちこちで緊急の改修を余儀なくされました。営々と築いてきた取水堰の、流域60万農民はどうなるのか。その思いと気迫だけが皆の胸の内に生きていました。

不思議なほど迷いなし

そうするうちに秋が来ました。水が引いた状態で、濁流に覆われていた河川敷が露わになると、変化した河道や砂州がくっきりと見えます。やっと再設計の測量が始められたのは、9月も下旬のことでした。
その結果堰造成は、予定した堰幅200mから450mに延長、3つの砂州にまたがる大工事となりました。その上に、上流の措置、既設の各取水口の改修、マルワリード用水路・沈砂池の債権などを余儀なくされています。
それでも、果たして出来るのかという迷いは、不思議なほど現地にはありません。「他に方法がなければやる。それで失敗すれば神の思し召し」という達観があるからで、膳のうち農民が祈る中、粛々と仕事が進められています。

自治性の伝統

なかなか伝わりにくいのは、アフガン農村に国家管理を拒む自治性が強く、政府の側でも公共事業をまともに執行できる予算や組織がないことです。支配も受け付けない代わりに、地域の事は地域自ら行うという体質です。
取水堰は日本の近世に完成した「斜め堰(福岡県朝倉市)」の構造を取り入れ、現地風に焼き直したものですが、おそらく200年以上の昔、基金や一揆が日常であった時代、わが国の農村も似たような状況であったろうと想像しています。知れば知るほど先人たちの知恵と忍耐に驚かされます。
その偉さは堰の設計と工事を自ら行ったというだけではありません。改修を村民自らが行い、用水路という自らの生命線を200年以上、維持してきた事です。
とすれば、私たちも似たような苦労をたどっていることになります。一時帰国時に、山田堰土地改良区や河川・灌漑方面の厚意で、改めて土砂吐きの構造を見学できました。細かい点は割愛しますが、見事です。土砂堆積を避け、上下流に影響を与えない工夫がちゃんと凝らされています。
しかしそれ以上に、「壊れなければ強くならない」という、地域に遺された言葉は、胸を刺すものがあります。技術を絶対視せず、自然の中で人間の分を弁え、忍耐を重ねて共存していく事です。近代で置き去りにされた先人の謙虚な逞しさが、ここにあります。この点こそが、はるかアフガニスタン東部の農村事情と直結氏、水利施設を維持して強度を護る力になるのだと思いました。

生きるための戦い

かくて川沿いの寒風を衝き、工事は続けられています。私たちが掲げるのは、生きるための戦いです。巷ではテロや空爆、難民の噂が絶えませんが、私たちは「対テロ戦争」などという、おぞましい戦列には加わりません。それこそが果てしない暴力の応酬を生み出してきたからです。
水が善人・悪人を区別しないように、誰とでも協力し、世界がどうなろうと、他所に逃れようのない人々が人間らしく生きられるよう、ここで力を尽くします。内外で暗い争いが頻発する今こそ、この灯りを絶やしてはならぬと思います。
今年もいろんなことがありましたが、変わらぬ温かい祈りと支援に支えられ、現地は希望をもって歩んでいます。困難な事情にもかかわらず、ここまでこれた事を感謝します。日本も大変ですが、どうぞ工事の成功をお祈りください。
良いクリスマスと正月をお迎えください。

2015年12月 ジャジャラバードにて

Comments

>他所に逃れようのない人々が人間らしく生きられるよう、ここで力を尽くします。
 そうなんですよね!人間に逃げ場なんて無いんですよ。そりゃあ逃げれる人は逃げれば良い。でも追いかけてくるんだなぁ、、。
だったら逃げずに挑むという方法も有る訳で。
中村哲氏はそちらを選択していらっしゃる訳です。
首相の役目をこの方にして貰いたい。中村氏なら、戦争回避の方法を編み出し実践してもらえるだろうに、、、。

武尊43様

コメント有難うございます。
>首相の役目をこの方にして貰いたい。中村氏なら、戦争回避の方法を編み出し実践してもらえるだろうに、、、。

本当にね。
でも,そういう人を選べないというのも、属国の哀しい所なのですよね。

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